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1800-01-01から1年間の記事一覧

ベトナムの光彩〜結城昌治「ゴメスの名はゴメス」を読んで〜 松浦綾夫

ベトナムの光彩 〜結城昌治「ゴメスの名はゴメス」を読んで〜 松浦綾夫 紀元前1世紀から中国に支配されたベトナムは安南と呼ばれ、19世紀にフランスの植民地となり、その後日本の支配下に置かれた。戦後、南北にひきさかれ、米ソ対立の主戦場と化し、その…

「『ヒューマン・ファクター』についてのメモ」極楽寺坂みづほ

直前に読んでいたのがたまたまイアン・マキューアンの『贖罪』だったので、期せずして現代イギリス文学をたてつづけに2作読むことになった。前々から思っているのだが、イギリス文学と日本文学の土壌はわりと近いと思う。村上春樹後の今でこそ、アメリカ文…

「ヒューマン・ファクター」を読んだあなたへの10の質問状 松浦綾

質問1 「ヒューマン・ファクター」という作品名に、もし邦題をつけるとしたら、あなたはなんと訳しますか。質問2 主人公のカッスルの生き方をどう思いますか。あなたは共感できますか。それとも「もっとうまくやればいいのに」と思いますか。質問3 英国人…

「藤沢周平的グリーン礼賛」 月立 晶

わたしは昔から、周期的に脳が渇いてヒリヒリする感覚に襲われることがあり、そうなると上質の時代小説でしか渇きを癒すことができない。理由はわからない。ただそういうことがあるというだけのことだ。幸いにして山本周五郎や池波正太郎、柴田錬三郎と多作…

匿名希望「小林秀雄をひっぱたきたい」

わからない。何が書いてあるのかさっぱりわからない。2回も読んだのにわからない。しかも2回目はメモをとって読んだというのにわからない(2回じゃ足りないのだろうか)。もちろん日本語としての意味はわかる。いや、嘘ついた。じつは日本語としての意味もわ…

松浦綾夫「小林秀雄が聞こえない―「モオツァルト」を読んで―」

1 小林秀雄に三度出逢い損ねている。 一度は中学のとき。絵画に興味をもちはじめて、小林の『近代絵画』を読もうとした。が、主観を叩きつけるように書かれた文章に、この老人はセザンヌやゴッホの絵のよさよりも、おれの意見を聞けと喚いている、と思い、…

内海惟人「モオツァルト」

自分の番だけはしっかり書かねば、と思いつつ、やはり時間がなくて中途半端のまま、書き始めなければならないはめになりました。いつものごとく考えていることの経過報告ということになります。 1 「批評」の発見 今回考えたかったテーマは「批評」です。こ…

id:URARIA 「『海炭市序景』を読んで」

「海炭市叙景」は、架空の町を舞台とした人びとの物語だ。二章十八節で構成されたこの作品は未完であり、四十一歳で死んだ著者の晩年の作品だという。 登場するのは権力にも財産にも縁のない、いわゆる市井の人たちだ。いわゆる中流から下流。ブルーカラーか…

内海惟人「佐藤泰志『海炭市叙景』論」

「海炭市」という架空の名前の街の情景を舞台に、人々の生活が幾分ドラマ的に、しかしが淡々と綴られていく。佐藤泰志の小説の世界というのは、今回初めて触れたわけだが、決して意外なものではなく、どこかで聞いたような懐かしさがある。それは地方都市の…

辻夏悟「『海炭市叙景』についてのメモ」

■エピグラフとして それではチャンドラーはどこに引き継がれたか? それに対する答えはひとつしかない。チャンドラーの核は都市に引き継がれたのである。それは都市という名の地底に吸い込まれ、まったく別の形となって現出するであろう。 ――村上春樹「都市…

松浦綾夫「『私』が世界と繋がるための物語 〜佐藤泰志「海炭市叙景」を読む〜」

私にはちいさな子どもがいる。半年ほど前からようやくひとりで歩けるようになった。言葉も、単語を50個くらい、たどたどしく口にできる。絵本を見るのが好きだし、絵を描くのが大好きだ。ひまさえあれば、スケッチブックにクレパスで色を塗っている。まだ…

図書出版クレイン 文弘樹「『海炭市叙景』を読んで」

●私の読後感のキーワードを以下、記します。 1. この場所に居続けること 第二章の「3 ネコを抱いた婆さん」が象徴的な作品だと思うのですが、この「海炭市叙景」の中の何編かは、時流や状況の変化に動かされることなく、他人からは「頑固者」と言われながら…

極楽寺坂みづほ「自戒を込めて読み返したい」

純文学とそれ以外の境界線はもともと曖昧なものだし、両者を劃然と分けることにそもそも意味があるのか、という疑問は常にある。それでもやはり、慣例的な違いというものは存在するし、おおむねの作品はそのどちらかにカテゴライズできるものだと思う。そし…

「懐かしい声 〜『青い朝顔』に寄せて〜」月立 晶

「あれ、読んだか?ナカガミのインタビュー記事」 「ああ、しかし都はるみっていわれてもなあ…」 溜まり場だった焼き鳥屋の座敷で、いつものように「ハツ、シロ、スナギモ」と声をかけ、おしぼりと同時に供されるチューハイをのどに流し込みながら始まる貧乏…

「中上健次『青い朝顔』論」内海惟人

中上健次の世界ということで、すぐに上がってくるキーワードは「路地」だろう。この世界について批評家や研究者が多くのことを語ってきたが、本当のところどのように考えればよいのだろうか。 「紀州」という彼の作品の舞台となる地域をルポルタージュしたも…

「小さいながら巨大な遺作〜中上健次「青い朝顔」を読む〜」松浦綾夫

「青い朝顔」には、中上健次の小説を読むうえで、最も原初的な、大切な、光景が描かれている。「一番はじめの出来事」が素朴に書かれている。そして、この短篇は中上の膨大な小説群の核となっている。幼き日の健次少年の目から見た、父親の異なる姉たちとの…

「『旅の時間』の印象」内海惟人

吉田健一というすぐに思い浮かぶのは「英語が出来る人」。それと『シェイクスピア』や『英国の近代文学』といった、自分の頭で外国文学を読めて理解することができる人が書いた本の著者という認識を持っていた。 彼の小説は、金井美恵子や松浦寿輝などに影響…

「飲み助の離人症状なのか?」極楽寺坂みづほ

この人はたいへんな飲み助である。もう、理屈抜きで飲むのが好きだということが、同じ飲み助の身にはひしひしと伝わってくる。実際、ほぼどこに行っても彼は飲んでいる。 「彼は」と言っても体裁上は同一人物ではなく、「谷村」→「村山」から始まって「川西…

「馬鹿馬鹿しさの真っ只中で犬死しないための方法序説」辻夏悟

1 吉田健一流にまず廻り道をすることから始める。 1970年代に「吉田健一ブーム」というものがあった。しかも若い読者を中心に。 吉田さんは評論家としても作家としても立派な仕事をなさり、文章が読みづらいということになっているのに、むずかしい文章を読…

私の「旅の時間」松浦綾夫

あふれかえった通勤客がホームから落っこちないのが不思議なくらいの小田急線の新宿駅で、2台下りの急行列車を待って列の先の方についた。乗客を嘔き出した列車の表示が始発に変わり、ようやくドアが開いた。肩からは通勤鞄、小脇にかかえるのは吉田健一の…

山中恒『おへそに太陽を』粗編集2

★辻夏悟 エロの壁(←特に意味はない) 今回U研メンバーの殆どがレポートで、本作品について、エロだ!、エロだ!、脳内革命だ!と書いているが、やっぱり児童向けの読み物では、エロはとても重要。 自分も小学生男子の頃は、脳内の50%がエロのこと、残りの50…

山中恒『おへそに太陽を』粗編集

読書会の当日が迫ってますので、暫定的にレポートをまとめてアップします。届いたものをアップしただけといってもよい。 読み辛いですが、近日中にまとめますんで、しばらく我慢してください。 ★奈保千佳 「おへそに太陽を」再読して気づく ばかばかしさの中…