[日誌]ルソー『告白』を読む④
『ルソー研究』の「人間ルソー」を読んだが、あまりピンとこなかったので、『告白』を数日寝かせておいた。久々に手にとって読んだら不思議に面白く読める。どうしてかと思えば、思想家ルソーにはあまり興味はないが、歩行者ルソーには、昨年読んだレベッカ・ソルニット『ウォークス』やいま仕事で関わっているプロジェクトに関連していて興味があるのだった。ちょうどこんなところである。
わたしは信心家ぶる案内者と、その快活な細君とともに、陽気に旅をつづけた。道中無事、身体も精神もかつてないほど爽快であった。若くて、元気で、健康にみち、何の心配もなく、自分にも他人にも信頼しきっていたわたしは、この短いけれども貴重な人生の一時期にいたのだ。あふれるような充実感がいわばあらゆる感覚によってわれわれの存在を拡張する。そして生きていることの魅力が、全自然をわれわれの目に美化する、そういう時期なのだ。
わたしの全生涯を通じて、この旅についやした七、八日の間くらい、まったく気苦労のなかったことはまたとない。サブラン夫人の足に合わして歩くので、長い散歩のようなものだった。この思い出によって、この旅に関係のあったことが、後にどれもこれもひどく好きになった。とくに山と徒歩旅行だ。
まず第一にしたことは、市街を一巡して好奇心をみたすことだった。いわば、これは自分のえた自由を実行してみるだけにすぎなかったが。
もっぱら独立と好奇心の満足をたのしんで幾日もすごした。市の内外をうろついて、珍しいもの目新しいものを、片はしからさぐって見てまわった。
積読になっていたソローの『歩く』をちょうど読みはじめて、「なんか自然のなかを歩けばっか言っててつまんねーなー」と思っていたところだったので、都市を歩くルソーの姿が新鮮に見えたというのものある。
[日誌]ルソー『告白』を読む③
俺がルソー『告白』に苦戦していると聞きつけた、U研メンバーの内海さんがメールをくれた。
『告白』を読むために参考になるかどうかわかりませんが、ルソー受容の概要を思いつくままにメモしておこうと思います。
(日本)
なんといっても中江兆民の『民約論』でしょう。
こうした試みは明治時代における日本への最新思想の導入のひとつとしてなされたわけですが、その関心は政治論、社会思想というところにあるでしょう。
鹿島茂の『ドーダの近代史』後半に経緯が書かれていて面白い。その次に鴎外訳の『懺悔録』(『告白』のこと)がありますが、その影響及び評判の解説は怪鳥にお任せしたいと思います。
いきなり戦後にとんで京大人文研究所の共同研究による桑原武夫編の『ルソー研究』(続いて『ルソー論集』)が日本におけるルソー研究のピークかと思います。
しかし中身をみると、やはり社会思想、政治思想、教育思想といったところが関心の中心にあることがわかります。
要するに、フランス革命に影響を与えた思想家ルソーというのがその理由で、戦後の主流の思潮であったマルクス主義側にとって乗り越えられるべき思想としてルソーを研究する必要があったのでしょう。
あと、西洋哲学、思想の中でも、ゲーテ、カント、ヘーゲル等々に影響を与えたということからも読まれたものと思われます。で、一方フランス文学プロパーの中でどうかというと、スタロバンスキーの『透明と障害』など新批評を除くと、あまり研究の中心にあるとは思えない。18世紀の文化、思想を俯瞰するなかでどう位置付けるかという関心になっていると思います。
また「現代思想」が79年に別冊で特集したとき、副題が「ロマン主義とは何か」となっており、当時の関心のありどころがわかります。
なるほど…。『ルソー研究』の「人間ルソー」を読むべしとのメッセージもいただいた。
いったい人はどうして誰かの自伝・伝記を読むのだろう? 『告白』はルソーの死後出版とのことだが、当時の人にどう受容されたのか。そもそもその頃の出版物はどんなジャンルのものが多かったのか。その中に置いたとき、『告白』はどんな見えかたをしたのか。
ひとまず『告白』の第2巻を読み始める。ルソーが愛したヴァランス夫人という女性が出てくる。恋愛の話ってとにかく興味ないんだよなーと、またしても苦戦の予感。『マイルス・デイビス自叙伝』のマイルスとフランシス・テイラーの痴話喧嘩なんかであれば、楽しく読めるんだが。結局、ルソー本人に対する興味の欠如が原因だろう。俺の問題なので、読書会までには何とかしたい。
[日誌]近況など
唐突にブログを再開してみたので、近況を箇条書きに書く。
- 今年で43歳になった。
- 目的がないと本が読めなくなった。
- 最近読んだ阿久津隆『読書の日記』の帯コピーに「食べるように本を読む」とあって、それは俺にとって、とても理想的な読書スタイルだが、実際のところ俺は「働くように本を読む」のであった。
- むかしは自分の日常がすべて「仕事化」していくのが嫌だったが、最近はそれでいいと思っている。自分で主体的にやりたいことというのは、もうそんなに無くなった。知りたいことも、もうそんなに。
- 山崎正和の『不機嫌な時代』と『鷗外 闘う家長』を読んで、「ああ、これは俺のことを書いてあるな」と思った。欲望の弱すぎる「審美的生活者」(夏目漱石『それから』の代助を評する言葉)、それが俺だ。欲望が弱すぎるから、すべてを仕事にするしかない。
- 腎臓の病気でしばらく入院していた。健康は人生を楽しむ最低限の条件だと痛感した。
- 性欲は薄れたが、食欲は強まるいっぽうである。
- 酒を飲んだり、お茶を飲んだりしながら好きな人たちと話す。あるいは散歩しながら人と話す。最近は、それが何より楽しい。
[日誌]ルソー『告白』を読む①
[日誌]今年のいろいろベスト
前半、すこーし落ち込んだりもしたが、後半、持ち直した。
そんな年だった。俺はもう大丈夫だ。
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