1800-04-01から1ヶ月間の記事一覧
「海炭市叙景」は、架空の町を舞台とした人びとの物語だ。二章十八節で構成されたこの作品は未完であり、四十一歳で死んだ著者の晩年の作品だという。 登場するのは権力にも財産にも縁のない、いわゆる市井の人たちだ。いわゆる中流から下流。ブルーカラーか…
「海炭市」という架空の名前の街の情景を舞台に、人々の生活が幾分ドラマ的に、しかしが淡々と綴られていく。佐藤泰志の小説の世界というのは、今回初めて触れたわけだが、決して意外なものではなく、どこかで聞いたような懐かしさがある。それは地方都市の…
■エピグラフとして それではチャンドラーはどこに引き継がれたか? それに対する答えはひとつしかない。チャンドラーの核は都市に引き継がれたのである。それは都市という名の地底に吸い込まれ、まったく別の形となって現出するであろう。 ――村上春樹「都市…
私にはちいさな子どもがいる。半年ほど前からようやくひとりで歩けるようになった。言葉も、単語を50個くらい、たどたどしく口にできる。絵本を見るのが好きだし、絵を描くのが大好きだ。ひまさえあれば、スケッチブックにクレパスで色を塗っている。まだ…
●私の読後感のキーワードを以下、記します。 1. この場所に居続けること 第二章の「3 ネコを抱いた婆さん」が象徴的な作品だと思うのですが、この「海炭市叙景」の中の何編かは、時流や状況の変化に動かされることなく、他人からは「頑固者」と言われながら…
純文学とそれ以外の境界線はもともと曖昧なものだし、両者を劃然と分けることにそもそも意味があるのか、という疑問は常にある。それでもやはり、慣例的な違いというものは存在するし、おおむねの作品はそのどちらかにカテゴライズできるものだと思う。そし…