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働く男


 家に帰ってきたらどしゃ降り。午前中は掃除・洗濯・布団干しなどの家事をこなし、午後は中古のデジカメを探しに学芸大学の辺りまで遠征してました。


鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)


 『鍵のかかった部屋』だけど、最初読んだとき、これは「働く男」((C)ユニコーン)の小説だと思った。フリーの人間による労働(作家もそうだね)を書きたかったんじゃないかと。ほら、探偵小説というスタイルは、探偵っていう職業/労働自体が、物語になってしまうわけだから、そういう話が書きやすいのかなと思ったのだ。

  
 オースターの主人公たちはその労働の中でアイデンティティを喪失していく。けれどサラリーマン的な、縦の派閥(男子の世界でありがち)からも横の派閥(女子の世界でありがち)からも外れて、フリーで働く彼らの姿はちょっと魅力的に見えたりする(現実には厳しい世界だろうと思うけど)。


偶然の音楽 (新潮文庫)

偶然の音楽 (新潮文庫)


 オースターには『偶然の音楽』という不思議な小説がある。この作品の後半、主人公たちは賭けに負けた代償として、黙々と石を積み上げる作業を、その目的も教えられずに強制される(そして驚愕?のラストが待っている)。


 でもこれも実に楽しそうなんだな。働くことが辛くなったら、これを読むとけっこう効く(サプリメント的な消費)。


リヴァイアサン (新潮文庫)

リヴァイアサン (新潮文庫)


 『リヴァイアサン』で描かれるテロリストと化した作家だって、フリーで働く男のヴァリエーションだし、『ミスター・ヴァーティゴ』も空飛ぶ労働少年の物語だ。


ミスター・ヴァーティゴ

ミスター・ヴァーティゴ


 『スモーク』も煙草屋のおじさんの話じゃないか。この映画/脚本は、オースター流のアイデンティティ探索/喪失色が薄いから、素直に主人公の「働く男」っぷりを楽しめる。


スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス (新潮文庫)

スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス (新潮文庫)


 自分自身だけを頼りに黙々と働く主人公たち。そう考えると、普段は何を読んでもピンとこない*1オースター作品が少しは面白く思えてくるから不思議です。


ポール・オースター (現代作家ガイド)

ポール・オースター (現代作家ガイド)


 この研究書の内容も何だかピンとこないな…。

*1:と言いながら僕は翻訳された小説を全部読んでたりする。