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ぽっかりあいた心の穴を

ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ

ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ

僕は加藤典洋さんという評論家が基本的に好きである。時に、トンデモか?と思うときがないわけでもないが。
加藤さんの「やわらかい」ことを「かたく」書いた文章(『ゆるやかな速度』(ISBN:4120019810)の中の『タッチ』論など)や、「かたい」ことを「やわらかく」書いた文章(講談社文芸文庫版の高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』(ISBN:4061975625)の解説など)が特に面白いと思う。
加藤さん独特の例え話もいい。普通、例え話とは物事を分かりやすくするためのものなのに、加藤さんの場合は、さらに話が分からなくなる(ときがある)。そこが、なぜか、ツボにはまるのだ。
この本は「かたい」ことを、どちらかというと「かたく」書いた本で、そういう意味では好みとは言えないのだけど、とりあえず最後まで読んでみるつもりである。一見、ポップ(「やわらかい」)なんだけど、実は重い(「かたい」)南伸坊さんの装丁が、いいですね。

こうしてわたしはまあ自分なりの批評の原理を手にいれることになった。それは一言で言えば、徒手空拳ということである。(P232)

確か、加藤さんは講談社文芸文庫版『日本風景論』(ISBN:4061982354)の後書きでも同じことを書いている。この考え方は、僕が仕事に向かうときの基本原理にさせてもらっている。
ビジネス書の類は、そこに並んでいる言葉が軽すぎるのに抵抗があって読めない。むしろサラリーマン生活で大事なことは、「全て、文学から教わった」。