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2005年に読んだ新書10選 奈保千佳


 新書というものにこれまであまり触れてこなかった。理由はおじさんが読むものではないかと思っていたことと1冊800円近くして、コストパフォーマンスが悪いと思っていたため。平凡社が多いのは今年に入って仕事をするようになったSさんが、平凡社新書の立ち上げに関わった編集長だったということ。そんな親しみ感から、比較的たくさん読んだ気がする。



1・「しのびよる ネオ階級社会」(平凡社 林信吾


林信吾は鋭いということを改めて実感。日本がイギリスのような階級社会に傾いていくという話。タイトルで得しているみたいで、内容としては「これでもイギリスが好きですか」の方が面白かったのだが、売れ行きはこちらの方が良いようだ。赤旗に書評が載った。



2・「不機嫌なメアリーポピンズ」(平凡社 新井潤美


イギリス文学の観点からイギリスの階級を読み解くという内容。「ジェインエア」「嵐が丘」等の登場人物の描き方から女性の間の階級の違いを探る。それを踏まえた後にメアリーポピンズ論に入る。メアリーポピンズという住み込みの家庭教師の地位とか女の出世コースとしてのポジションとか、物語の表面からは分からない部分が分かって面白い。これも赤旗に書評が載ったようだ。


3・「これでもイギリスが好きですか」(平凡社 林信吾


林信吾の著書。イギリス本といえば、林は林でも林望が定番だった。林信吾有識者で高学歴な学者やジャーナリストの書いたイギリスの幻想をばさっと斬っている。世間で持っている、イギリス=品のある大人の国というイメージを覆す、楽しくも恐ろしい新書。現代史を読み解く上でも興味深い。林信吾自身も、林望を始めとするイギリスブームの火付け役に痛烈な嫌味を言っているところも面白い。といっても、林望の「イギリスはおいしい」も平凡社から刊行されているのだが。


4・「下流社会」(光文社 三浦展


自分の年齢×10倍以下の年収、インターネットをする時間が長い、自分らしく生きたい・・・などというような項目に該当する人は下流らしい。これを読む限り、私は年収と比例していないが上流気分らしいということが判明。階級といってもこれはアメリカ型に日本が傾いていくという警鐘。


5・「プロレタリア文学はものすごい」(平凡社荒俣宏


プロレタリア文学というと背筋を正して神妙な面持ちで読まなければいけないものではないか?資本家による搾取と貧困、赤貧、流血・・・。みたいなえらい恐ろしいイメージがあって、教科書レベルでしか読んでこなかった。この新書はそんなプロレタリア文学が実は劇画チックでエロスたっぷりで、かつ性に関しても禁断の域を超えた現代で言うところのフランス書院の出版物のような面白さがあることを教えてくれる。擬態語や擬声語の使われ方の例などは、読んでいてぷっと吹き出してしまうような愉快さだ。だからといってプロレタリア文学を読んでみようという気になるかというとそれとこれは別だ。


6・「オニババ化する女たち」(光文社 三砂ちづる


負け犬の次はオニババか?アエラが喜んで食いつきそうなテーマだった。(実際食いついていた。)身体面から考えても1人で生きていく自身のない女(負け犬にもなれない女)はさくっと子供を生んでしまえ!というかなり強引な論の展開が賛否両論か。


7・「上司は思いつきでものを言う」(集英社 橋本治


橋本治の文体は苦手だったが、これは読みやすかった。日本の社会のピラミッド型の縮図が会社にもあり、なので上司は思いつきでしか物が言えなくなってしまうら
しい。某次長の思考回路がやや理解できたような・・・。


8・「国際離婚」(集英社 松尾寿子)


夏ごろ、もはやこれまで・・・。と思ったときにふと手にしてしまった。国際結婚して、離婚する場合は、二つの国で手続きをとらなくてはならなくて、めちゃめちゃ大変らしい。別居期間を2年とかしなくては離婚できない国とか財産、子供も第三者が入ってきっちり2等分する国とか、いろいろな事例があって面白かった。紙切れ一枚で離婚ができる日本という国はかなり特殊らしい。(ほんと紙切れ一枚だと思った。)ためになった。


9・「ハプスブルク家」(講談社 江村洋


今年は宝塚と東宝でそれぞれ、エリザベートを観た。個人的には東宝エリザベートが好き。宝塚だと全て女で、かつ芝居の中では男同士の禁断の愛が出てきたりというダブルバインドに感情移入ができなかった。そんなこんなで、エリザベートについて、良く知ろう!と思ってこれを手にした。主要人物が年代順に紹介されていて、読みやすかった。エリザベートは今で言うところの拒食症だったんだろう。息子の不可解な死も実際の話だった。そして、やっぱ、マリアテレジアはすごいなぁと。女傑だし、子供を16人も生んでいるし、夫婦円満だし長生きだし。ハプスブルク家の誰かになれといわれたら、迷わずマリアテレジアを選ぶ。


10「江戸の化粧」(平凡社 渡辺信一郎


鶯の糞の使い方やぬか袋、ヘチマなどの美肌効果などに引かれて読んでみた。コスメの伝わり方や流行り方というのは今も昔も変わらないということを実感。鶯の糞は、ロフトでも売っているけど、私は使わないな。あとおはぐろの施し方や人相事典が面白かった。人相事典なんて、いろんなタイプの顔を載せているのだが、淫乱のそうは、目が大きくて口も大きいといういかにもそういう顔だし、貧乏の層は額が狭くて眉毛が下がっていて口がへの字というこれもいかにもお金がなさそうな女のイラストが載っている。当たり前のことをもっともらしく語っているのがあほらしくて面白かった。