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2005年のMYベスト舞台 南野うらら


第1位
2005年2月 青山劇場 『デモクラシー』 ホリプロ創業45年周年記念 
出演:鹿賀丈史市村正親 作:マイケル・フレイン 演出:ポール・ミラー


空席がちらほらあったのが悔しかった。私的には文句なく№1。原作はマイケル・フレイン(2000年トニー賞受賞(『コペンハーゲン』)、小説『スパイたちの夏』等)。演出家のポール・ミラー氏曰く。「劇作家がコメディを書くのに、何よりも退屈で小難しそうな題材、すなわちドイツの戦後政治をあえて選ぶ。それ自体が皮肉で面白い!」。戦後初の中道左派政権、首相ブラントとその秘書(実は東ドイツのスパイ)のギヨームの二人の友情と破綻……。敗戦国の悲しみとその克服を描く物語。鹿賀さんと市村さんの26年ぶりの共演としても話題を集めた。パンフに載っていた作者の言葉もイイ。「複雑さこそ、この芝居が描いているものなのです。人間そのものの複雑さ、そしてその複雑さゆえに生じてくる困難について」。実在のブラントが選挙演説に使った「もっとデモクラシーを!」という標語に由来するタイトルが、劇を見終わると何ともシニカルで切ない響きを帯びてくる。


第2位
2005年1月 シアターコクーン走れメルス 少女の唇からはダイナマイト!』 NODAMAP
出演:深津絵里 中村勘太郎 小西真奈美 古田新太ほか
作・演出:野田秀樹


1976年に初演された作品の再演。野田秀樹、二十歳のときの作品。うわぁ野田さんて天才だったんですねー!みたいな。言葉のパワーを感じる。でも「古い」。これ絶対に「今」じゃない。それなのに野田さん、女装して飛び跳ねてるし。いやあマジかっこええ。でも「アングラ」な「小劇場」がぴったりな「疾走する青春劇」をさ、一万円幾らもする席でさ、シアターコクーンのふかふかの席で観るなんて倒錯してる気がして落ち着かなかった。でも古田新太深津絵里勘太郎さんも小西真奈美も本当にステキだったので、№2。


第3位 2005年10月 『ブラウニングバージョン』自転車キンクリートSTORE(ラティガン連続公演№2)俳優座劇場 
出演:浅野和之内田春菊今井朋彦ほか 作:テレンス・ラティガン 翻訳・演出:鈴木裕美


ある意味2005年最大の収穫。いい……いいよ!! ラティガン。そして自転車キンクリート。 私、泣いちゃったよ……? タプローくんがアンドルウ先生のところへ駆け戻るときに、まったく予想外に涙こぼれたもん。内田春菊の微妙な存在感にも負けない、脚本の威力。ドキドキして悲しくて面白くて笑える。そして観たあと、不思議に心が落ち着く。
……ひとつだけ、台詞でひっかかったことがあって、「ん?」と思ってあとでパンフを読んでわかったんですけど、作者のラティガンはやっぱりゲイなのねー。いやあ、だって男同士の描き方が微妙に不自然なわりに、女性には冷静な観察眼向けてるんだもん。女性キャラが幻想の投影の対象ではなく「人間」としてよく描けている。夏目漱石がもっと洗練されてユーモアセンスが冴え渡って神経症じゃなくなってゲイになった……みたいな。1940年代後半のイギリス、パブリックスクールという設定も違和感はなく自然に入っていけました。とにかく泣いた劇は、今年でひとつだけ。


第4位 2005年12月 全労災ホール/スペース・ゼロ 『セパレート・テーブル』自転車キンクリート(ラティガン連続公演№3)
出演:久世星佳・歌川椎子 作:テレンス・ラティガン 翻訳・演出:マキノノゾミ


同じくラティガン連続三作公演のひとつ(第一作は残念ながら見逃してしまった)。演出は『まんてん』のマキノノゾミ。1950年代のイギリスが舞台。人は(特に女性が)老いること、しのびよる孤独をどうやって受け入れて暮らしてゆくか。社会は犯罪者あるいは異端者をどう迎えるべきか。テーマは重いですがあいかわらず笑いと涙の連続です。鬱屈した43歳、労働党政権で政務次官の地位に就いたこともあるけれど今は政治記者(?)といういかにもな、左翼ドメスティックバイオレンス男のキャラが光っていたなあ。このあたり演出のマキノノゾミの趣味っぽい。


第5位 2005年 帝国劇場『エリザベート東宝
出演:一路真輝ほか 作:ミヒャエル・クンツェ 音楽:シルヴェスター・リーヴァイ 翻訳・演出 小池修一郎


珍しいドイツ系の翻訳ミュージカル。今年で終演。宝塚版よりこちらの方が好き。エリザベートと夫のフランツが悲惨なまでに分かり合えていないところがよい。CD欲しい。


第6位 2005年2月『白鳥の湖シアターコクーン
出演:首藤康之 演出・振付:マシュー・ボーン 音楽:チャイコフスキー


今をときめくマシュー・ボーン出世作。台詞は一切ありませんが良質の演劇に近い印象を受けました。王子の心理が手にとるようにわかります。また、露骨にイギリス現王室のパロディになっているあたりがびっくり。


第7位 2005年6月 紀伊国屋ホール『熱海殺人事件 平壌から来た女刑事』
出演:石原良純 黒岩友香 作・演出:つかこうへい


初めて観たつかこうへい。衝撃だった。なんやこれわ。言葉が凶器になる瞬間。朝鮮民族大和民族も耳をふさぎたくなるほど貶されていたなあ。つかこうへいは命がけだなーと思った。これに比べたら『嫌韓流』とか2ちゃんねるなんて何でもないよねー。


第8位 2005年12月 四季『異国の丘』 劇団四季(昭和の歴史三部作№2)
出演:劇団四季のみなさん 企画・演出:浅利慶太ほか 作曲:三木たかし吉田正、近衛
文麿


これまでケイタをバカにしていてごめん。と思いました。なんなのーあの右翼ジジイ、謎の商業主義者とか思ってて。いや、それたぶん事実だけどそれはおいといて浅利慶太さんはすごいんだなと。こういうミュージカルつくれるのって、やっぱり志があるってことだと思うので。しかしケイタ氏は単なるチャイナ服娘萌えかもしれないと思う瞬間アリ。


第9位 2005年9月『李香蘭』 劇団四季(昭和の歴史三部作№1)
出演:劇団四季のみなさん 作・演出:浅利慶太ほか 作曲:三木たかし


実際に織り込まれる李香蘭や当時の流行歌(軍歌含む)がよかった。台本はどってことなかったけど(あ)。それから満州国の旗の視覚的な美しさ……このミュージカルが中国で上演されて好評だったという事実に驚愕。でも、確かにこれ日中友好イデオロギー劇としてよく出来てるので(ヒド!)。蒋介石の言葉が歌に織り込まれているのが笑えました。


第10位 2005年10月 『幕末蛮風』グローブ座
出演:大野智ほか 作:きだつよし


楽しかった。あははー。アイドル劇かと思ったらストーリーもちゃんとしていて……わりによかったですよ。ラストもどんでん返しがあって……幕末ファンとしても納得。グローブ座、昔シェイクスピアやってたときはガラガラだったのに……満員だったので衝撃受けた。


番外)


多重人格探偵サイコ』(紀伊国屋サザン・シアター)・・・どうなんだろうか。テーマ(理)がドラマに勝ちすぎの印象。

『シャッフル』(新宿パルコ劇場)・・・エンタメとしては面白いんだろう、きっと。

『キレイ』(シアターコクーン)・・・期待しすぎたのがいけないんだと思います。客観的には豪華で楽しい舞台なんだろうと思いますが、エンタメとしての洗練度と人間理解の浅薄さのギャップに目を剥きました。

『東姫桜文書』(シアターコクーン)・・・エロとしては素晴らしいのだけど。そんだけ……でも歌舞伎ってもともとそういうものなのかも。