2004―2005年ベスト10(順不同)内海惟人
・デリダ逝去(2004,10.8)
ここ数年、大物思想家の死が続いていたが、「フランス現代思想」の最後の巨
人ともいうべきデリダもついに鬼籍に入る。ここに一時代がおわると共に新たに
そのテクストの読解が始まるわけだが、弟子達の「ディアドゴイの争い」になら
ぬよう祈る。
聞き慣れたこの曲をこんなに気持ち悪く演奏するとは……。なんというか、言葉
がでなかった。コンサート後にサイン会をしていたのにも驚いた。
・小島寛之『確率的発想法』(NHKブックス2004年初刷)
昨年の本だが今年読んだ。売れ線をねらった最近よくあるタイトルだが、中身は
かなり深い。数学・経済学の新しいトピックを非常に読みやすくまとめている。
著者の意気込みも伝わってくる良書。
・『井筒俊彦著作集第一巻「神秘哲学」』(1991年中央公論社)
「熱い」といえばこれもかなり熱い。古本屋でようやく見つけて手にいれること
ができた。慶應での講義をまとめて戦後直後に出版された。著者のパトスがそこ
かしこからわき上がっている。第一章の締めくくりの引用が印象的。「語るべき
人々にのみ私は語る/戸を閉ざせ、局外者たちよ」
・ユリイカ8月号「雑誌の黄金時代」
最近の「ユリイカ」は工夫があっていい。もっと「文学」よりの内容にしてほし
かった気がする。
何か小説作品をあげたいが思いつかない。この『失踪日記』を小説で読んだらか
なり重くなるはずだが、絵が事実を救っているというのはマンガなせる技なのだ
ろうか。
第二次大戦のベルリン陥落という舞台はドイツ人にとって、日本人の原爆投下や
玉音放送と同じように「終末」のイメージとして繰り返し想起されるのだろう。
ドイツ文学をやっている友人がドイツ文学の没落物(「ブッデンブローグ家の人
々」のような)の伝統もあるのではないかと言っていた。
特に言いたいことはありません。
・北斎展(10/25-12/4)
「春朗期」から「画狂老人卍期」まで約五百点を展示。疲れました。
・バッハ・コレギウム・ジャパン「ミサ曲 ロ短調」(12/11東京オペラシティコンサートホール)
バッハを演奏させたら世界一のBCJ。今年もいい演奏会で一年を締めくくれま
した。