U研メンバーが選ぶ戦争文学3選(5)
内海“編集狂時代”惟人さんによる戦争文学の5選。
戦争文学3選
1)『壊れたヨーロッパ』 クルツィオ・マラパルテ(ISBN:479492299X)
2)『白痴』 坂口安吾(ISBN:4061960504)
3)『サブカルチャー反戦論』 大塚英志(ISBN:4044191174)
1韜晦と矛盾の固まりであるファシスト・マラパルテによる第二次欧州大戦体験記。「啓蒙の野蛮」というべきグロテスクさや家畜のような生者と死者が「壊れた(カプット)」ヨーロッパを覆う。2日本の戦後文学は「戦争」を巡る「文学」であった。戦時下の人間と白痴の女というわかりやすいメタファーだが、安吾の肉感的な描写は皮肉にも戦争を生が充溢する場として浮かび上がらせている。
3現在の「戦争」をどう捉えるべきか。われわれはまだその方策を得ていない。「虚構」の作者としての大塚英志が「虚構」のような「現実」を前にいかに振る舞ったか。これはそのクリティカルな戦いの記録である。