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U研メンバーが選ぶ戦争文学3選(3)

極楽寺坂"○○は副業"みづほさんによる3選。

SFにおける戦争文学3選



1)『太陽の帝国』J・G・バラード(ISBN:4336024421
2)『月は無慈悲な夜の女王ロバート・A・ハインラインISBN:4150102074
3)『戦闘妖精雪風神林長平ISBN:4150301832

 1はSFではないが、SFの書き手が書いた戦争モノってことで。日本軍に対して不可解なシンパシーを抱く英国の金持ち坊ちゃん(飛行機おたく)の心理描写が秀逸。スピルバーグの映画版もよかった。「ボクタチハミナトモダチデスヨネ」のところでドン引きしたけど、あれ原作にはない部分ですね。あれはない方がいいです。ナニカノマチガイデス。センソウノセイデス。

 2はハインライン師匠の軍国主義的右翼っぷりがいっそ爽快なまでに発揮された1作。正体見たりって感じ。『宇宙の戦士』もなんら義が立たない侵略戦争(ていうか「一方的殺戮」)だけど、あんな甲殻類みたいな、見るからに「話し合い」とかできなさそうなのが相手じゃなく、あくまで人間対人間、国家対国家であるってところで本作はもう言い訳きかなくなってる。暴力肯定。ていうかほとんど礼賛。しかも岩石地球にブッツけてんですよ? おいおい。恐竜が滅亡するって!

 3は、本質的に理解不能な存在(ジャム)との「戦闘」を余儀なくされた者の立場・心情を描きえたという意味で前代未聞な作品かと。この「理解できなさ」の底流にあるのは「ソラリス」なのだろうが、そこに「戦闘」という概念を持ち込んだ点が神林の独創性。しかも究極にはそれがそもそも「戦闘」と定義できるものであるのかどうかさえ誰にも確信できないという不気味さ。ただし続編『グッドラック〜』の方は深井零があまりにフツーの人間くさくなりすぎちゃってちょっと。奴はやっぱ「半分ジャム」みたいじゃないと。

ハインラインの『宇宙の戦士』。色々と言われる作品ですけれど、私、わりと好きですねえ。